下町散歩 > 割烹「みや古」(2004年9月取材)

割烹「みや古」

 イタリアで日本人がスパゲッティのお店に入ると、必ずアサリ仕立ての「ボンゴレを注文するのか」と聞かれるとか。それほど日本人のアサリ好きは世界で有名のよう。そのアサリを使った「深川めし」は、江東区深川で生まれた人気の郷土料理です。

漁師の船上料理から

 深川めしの原型は、江戸時代の漁師の船上料理だったということです。忙しい漁労作業の合間に食べるのですから、手間を掛けてはいられません。アサリと長ねぎで味噌汁をつくり、丼のご飯にかけて、豪快にかっこむというもの。こちとら漁師だい、大名のお姫さまみたいにオチョボ口して、米を1粒1粒縦に押し込むなんて、お上品な食べ方なんざしてられねぇや、ということでした。
 ところが、これが陸上でも大受け。働く人たちのファストフードとして明治になってからもよく食べられていました。思えば江戸時代は握り寿司といい、蕎麦といい、ファストフードが次々と生まれた時代。今でこそ高級料理のように見えますが、忙しくて気の短い江戸っ子の生活の知恵が生んだ食文化なのでしょう。深川めしも、その1つです。

「本家」は創業80年

 前号で紹介した松尾芭蕉記念館から約200メートル、「深川めし」の本家を名乗る割烹「みや古」があります。「深川めし」のノボリとアサリの生け簀が目印。外装は鉄筋ビルですが、内部は純和風。座卓の並ぶ大広間も個室も全て畳敷き。当主の女将、谷口栄子さんは3代目、4代目になる息子さんの英司さんは板場で修業中。
 「創業は大正13(1924)年ですから今年で80年になります。初代は大工さんだったんですが、娘ばかり3人生まれて、これじゃ大工は継がせられない、日銭の入る食べ物屋でもやるかと最初は天ぷら屋でした」。2代目の春義さんという方が全国を板前修業で歩くうちに、考えついたのが郷土料理の深川めしの改良版。いくらなんでも汁掛けめしでは少々さびしい。アサリの炊き込みご飯にしようと思い立ちました。

竹わっぱに盛られて

 さっそく深川めしのセットを注文、新潟特産の竹わっぱに盛られたアサリ、ねぎ、油揚げの炊き込みご飯に天ぷらまたは刺し身、おひたし、吸い物、お新香がついて2,500円です。磯の香りがムンムン。味は濃からず薄からず。コブダシに醤油、酒、味醂で味付けして、まずアサリをはじめ具をさっと煮て、その煮汁でご飯を炊き、炊きあがりに具をさっと混ぜて出来上がり。この二度炊きがうまさの秘訣のようです。
 戦後の1時期は、食生活の洋風化であまり人気が出ず、その一方で東京湾の水質汚染でアサリがとれなかったために危機におちいりました。しかし、現在は水質の改善で文字通り江戸前のアサリが使えるようになり、和食ブームに乗って堂々と復活。「どちらかと言うと遠方からのお客さまが多いですね。芭蕉記念館と江戸東京博物館の間にありますからご見学の合間に江戸情緒を楽しみにお立ち寄り下さる方が多いです」ということです。

割烹 みや古 江東区常盤2-7-1 電話03-3633-0385

ライター=H-Aiba 写真=M-Kamei

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